長崎県南島原市にある、西有家町。
子供の頃からずっと気になっていたのですが、この西有家町には「西有家新四国八十八ヶ所霊場」という札のあるお堂が、ところどころにありました。
昨年より地元で暮らすようになったのをきっかけに、この八十八ヶ所はどこにあるのか。調べてみようと妻と二人で5月より文献などを調べ、この度「西有家八十八ヶ所霊場」全てを回ることが出来ました。
この2ヶ月に及ぶ、八十八ヶ所霊場探しを通じて多くの人と出会い、そして多くの方の暖かさと触れ合うことが出来たことが一番の経験となりました。この場をかりて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
この西有家新四国八十八ヶ所は、平成十年に発行された西有家町郷土史に記述がありますが、全ての場所が乗っているのではなく、また多くの場合は、場所が移動されていたりルートが正しく表記されておらず、一般の方が八十八ヶ所を回るにはかなりの労力を要します。
(写真は一番札所・このお堂の脇に4番札所があります)
私たちも、その文献を読みながらスタートしましたが、まず第一番札所もわかりませんでした。そこで一番札所と間違えて訪れた智性院の奥様が、約40年前に「灘」という地区の方が調べた地図をお持ちで、その地図と奉納者名簿を元にやっと全てを見つけることが出来ました。
この八十八ヶ所が将来に渡って残されていくよう、きちんとしたマップの作成と奉納者の名簿等、よりみなさんにわかりやすい形で残そうと思います。
今回は、そのいくつかの霊場をご紹介いたします。
(第四十五番札所・知恩院)
この場所は、雲仙温泉街の外れから小さい鳥居を入り10分ほど歩くと着きます。特徴は大きな岩に出来た裂け目をくぐり現れるお堂と、その奥にある知恩院。昔、女性の方が開かれた修行の場所です。中の撮影は今回は行いませんでした。
(知恩院・岩の裂け目を通る道)
この場所があまり知られていないというのが、不思議なくらい。
(第十八番札所・旧島原鉄道竜石駅より歩きがいいです)
このお堂は、完全に民家の敷地内に有る為、見つけることが難しい場所です。その家のお婆様にご挨拶し、お参りさせていただきました。おばあさん曰く「20年以上ぶりに人が訪れた」と大変喜んでおられ、帰りに大量のいちごを頂きました。
(第四十三番札所・茶碗畑下)
西有家町には昔、とても大きな草原があったそうです。慈恩寺という地区から高岩山の麓までに広がった草原は、当時の小学生の遠足の場所として親しまれ、とても美しい場所だったようです。その様子は、「島原半島の100年」という写真集にあったように記憶しております。今では、人工的な植林に埋め尽くされ、当時の面影はこのお大師様を祀られている方のお宅の庭先に見ることが出来ます。このお宅は高岩山より水源を引かれており、昔の人たちの喉を潤してくれていたようです。
「25年ぶりにお参りしてくれた」
ここの方も私たちにそう言いながら、とても嬉しそうに昔の思い出を話してくれました。
(第三十三番札所・慈恩寺八幡宮参道近くの車庫)
印象的な場所に、「車庫」の中のお大師様がありました。本来は八幡宮の参道脇にあったものですが、管理されていた方が亡くなり、近所の方が仮としてお預かりしているとのことでした。慈恩寺地区には、今後道路が通るようで、その場所が確定したらきちんとしたお堂を作り、お祀りするとのことでした。
(第二十三番札所・長野地区)
長野地区の谷の間に有る、昔話に出てきそうなお堂。谷に広がる景色は、とても美しく稲穂の時期にはとっても綺麗そうだなと、個人的にとても好きな場所です。
(第三十二番札所・下観音寺の民家の中)
下観音寺に有る民家の中にあります。綺麗な庭に階段があり、その奥にお堂があります。ここも民家の中に有るので、お家の方を探し、お参りさせて頂きました。こちらの方も、「何年ぶりかわからないくらい、久しぶりに人が来た」と喜んで頂き、飲み物まで頂きました。
(第三十一番札所・上観音寺墓地の入り口)
唯一石をくりぬいたお堂で、とても可愛いお大師様です。このお堂の前には滝のような川が流れており、とても癒されます。この地域は昔から変わらない風景なのではないかと思える、とても静かで懐かしい場所です。
ここからは、自然が印象的だった場所です。
(第六十二番札所・見岳地域)
見岳の当田という場所にあります。とても大きな楠?杉?の下に有るお堂で、その木に触れるだけで元気をもらえます。
(第三十八番・三十九番札所・丸尾黄金の滝)
丸尾という地区に有る、丸尾滝に三十八番と三十九番札所が2箇所ありました。この丸尾滝(黄金の滝)本当に見つけにくい場所にあります。が、地元にこんな場所があったのかと思えるほど美しく、行く価値があります。三十八番は滝から鉄梯子で5mほど登った場所にありますが、現在はその梯子が壊れていますので、登ることは出来ません。細い滝がいくつも流れる空間。ぜひ訪れてみてください。(入り口の橋はいつ壊れるかわからないくらい怖いです。)
(第五十三番札所・見岳大払)
昔、日本酒を作っていた酒蔵の水取場の近くから、かなり急な岩場を登った先に有る洞窟前にあります。この場所は全くわからず、近所の方に連れて行って頂きました。昔はみなさんお参りしていたようですが、今はこの岩場の下にお参り場所が設けられているので、そちらでお参りされているようです。
(第五十一番札所・稲荷山山頂)
見岳に有る見晴らし公園から、さらに車で山道を登り、頂上らしき場所から、獣道に入ります。この場所も全くわからず、地元のおじいさまを車に乗せて案内をして頂きました。岩をくりぬいたお堂には、お大師さまの他、お稲荷様も祀られております。かなりの年月人が訪れていないようで、道が全く無いため危険です。
(第四十四番札所・空照洞穴)
八十八ヶ所霊場の中でも、秘境に有る空照洞穴。別名、行基洞。雲仙の開祖である行基さんが修行したことで知られる洞窟で、雲仙一切経の滝から獣道を歩いた先にあります。
自然の中に突如として現れる石の階段は、ちょっと怖いくらいの雰囲気が漂い、非常に神秘的で感動しました。この場所を探すにあたり、様々な人にルートをお伺いし、ようやく発見が出来ました。本当にありがとうございました。この場所は、大雨などの影響でルートが崩落し、非常に危険ですので山に慣れていない方は、専門のガイドさんにお願いすることをオススメします。
最後に、この八十八ヶ所巡りの中で、見つけた札所やその他の場所を紹介します。
(第十四番札所・志賀神社上)
西浦に有る志賀神社の脇を登った先にあります。今は訪れる人もなく、サギの巣と化しており非常に悲惨な状況にあります。この八十八ヶ所を回っている時に、徐々にこの地域の大切なものがなくなって行くように感じ、どうやって残して行くか。そう考えた場所でもあります。
(マリアさま?)
いくつか有るベールをかぶった像。この地域でいくつか見かけました。マリアさまに似た服装と、子供を抱いた姿から勝手にそのように感じたのかも知れません。
(第十八番札所でいちごをくれたおばあさんと)
今回、約2ヶ月(休みの日に回ったので・・・)かけて探した全八十八箇所と番外札所。この八十八ヶ所の不思議なところは、全く面識の無い知らない人たちが、お大師様という同じ信仰の元に、同じ目的で守られているということ。そして、それが非常に小さなコミュニティで守られているということです。ここにとても感動を覚え、なんとかこのお大師さま巡りを残せないものか、考えております。
地域の活性化には、昔から住む人々のDNAにどのような記憶が有るのか、それを知り感じることで、その地域の魅力を深く伝えることができるのではないかと思っております。
新しく物を作ることは誰にでも出来ることですが、今までに有るものを壊すほどの価値が有るかと言えば、そうでもありません。
先ずは「有るもの探し」をしてみましょう。
お疲れ様!凄い!
なんかズドンと胸に来た!
凄く良いことをしていると思います。
頑張って、未来に残してください!
コメントありがとうございます!!浅草下町の坊主頭さん!!!
名前にヒントがありすぎて、ほぼ解ってますが (笑)
頑張って未来に残して行けるように、頑張ります!!
素晴らしい!ありがとうございます✨
コメントありがとうございます!!これからどの様に残してゆくか、様々な方法を考えながら頑張ります!!!
FMひまわりのページを見てやってきました。私も西有家在住で、西有家八十八か所のことがずっと気になっておりましたので、非常に参考になりました。もっとたくさんの方が訪れるように、地図等の配布をされたら、とか思っておりましたが、私有地の中に有ったり、危険な場所に有ったりと、なかなか気軽に訪れるのは難しそうですね。地道に整備をしていくしか無さそうですね。
コメントありがとうございます。ずっと気になっておられましたか! とても嬉しいです。
現在、Googleマップで正確なポイント表示をしていますが、公開をしておりません。理由としてはおっしゃる通り、私有地に有る為、所有者様の許可をいただかなければと思っております。
八十八ヶ所巡りは、すでに地域の人の記憶や文化から少し離れてしまって居ると感じておりますので、先ずは少人数でも良いのでもう一度「八十八ヶ所巡礼」を始めるところからスタートしようと思っています。
その際、ご興味があればご一緒にいかがですか!?
ご返事をいただいていたのに、今まで見逃しておりまして、大変申し訳ありませんでした。
すぐにでも、ご一緒に廻りたいのですが、自分で店をやっておりまして、なにしろ多忙で、なかなか時間が合わないのではと思います。
しばらくは、ブログを拝見して楽しませていただこうかと思っています。
なお、西有家八十八か所については、30年ほど前に、元西有家役場の職員をされていた、嶋田惣二郎氏(西ノ浦在住)も、調査されていますので、ご参考になればと思います。
話は替わりますが、私と同級生(現在58歳)に、小田ふじお君という方がいらっしゃったのですが、ご親戚ですか?
コメントありがとうございます。今後もブログの方でお楽しみくださいませ!!お時間あれば、ご一緒に回りましょう!
30年程前の八十八ヶ所調査に関しては、役所の方よりご紹介をいただきまして、事前に読まさせていただきました。現在はかなり場所も変わってしまっていましたが、無事に全て見つけることができました。
ちょっとした自慢なのですが、「西有家郷土史」の調査で未発見だった42番と60番も見つけました!!
また、小田不二夫は、私の伯父でございます。